文芸『たまゆら』編集長                       オフィシャルブログ

文芸『たまゆら』編集長のきままなページです。『たまゆら』は30年以上続く老舗の文芸同人誌です。小説、エッセイ、詩、俳句、短歌、紀行文など、好きなジャンルで好きなように書く表現の場です。あなたの書きたい気持ちを活字に。

第1回『たまゆら』同人誌寸評 

小誌の顧問佐々木国広が寄贈された同人雑誌の中から作品をピックアップして感想を述べています。これまで掲載されたものを順を追ってご紹介します。


f:id:abbeyroad-kaz:20210920053249j:plain★『たまゆら』118号(令和2年8月30日刊)」から

☆森ゆみ子「サピエンスの部屋」(『空とぶ鯨』第20号)

 千恵はメンタルケアルームのカウンセラー、人生相談所の看板を掲げている。或る女子高校生は友人関係で、和子おばあちゃんは息子のことで、四十代の鰥夫は他人の幸不幸にこだわること云々で相談に訪れる。千恵は慰めたり、寄り添ったり、逆に自信を無くしたりするが、視点を変えれば新しいことが見えてくるし、何もないところに意味があるのだと諭したり、自ら気づいたりする。要するに諸々の執着から、あるいは孤独からの脱却を促して、相談者に安らぎを与えようと奮闘するのだが・・・。

 ところで、説法でいうなら慈悲喜捨は肝心要だが、三十代で独身、非力を自覚する主人公がこのような難しい仕事に就いた決め手とか動機は何だったのか、「悲しみの詰まった殻」はあったのかどうか、いささか気にかかる。

 ☆小澤房子「楓子さん」(『空とぶ鯨』第20号)

 小川みどりは実父の工場が倒産したため洋裁の技術を活かそうと、リフォーム洋服店に転職するが、工業用ミシンを操っていてしばしば失敗する。暗い過去をもつという主任の楓子から責められたり、嫌味を言われたりして怖くなる。実はみどりは難聴の持病を隠していたのである。やがて補聴器を付けていたことがバレてしまい、暗に辞職を促され楓子とも別れを・・・。

 難聴をテーマにした作品は極めて珍しいので取り上げた。誰しもコンプレックスは隠したがるものであろう。主人公は伝音性難聴ではなく、感音性難聴なのだろうか。治療は諦めているようだが、中医学では耳マッサージとかエアー縄跳びなど幾つかの改善策が有効だとする参考書もある。
 ※この同人誌評は定期的に更新します。
 
 

 

『たまゆら』が全国同人雑誌賞奨励賞をいただきました

特報!

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奨励賞通知

たまゆら』が全国同人雑誌協会による第1回全国同人雑誌賞の選考の結果、奨励賞を受賞いたしました。全国同人雑誌協会は今年4月、同人雑誌の交流と結合、同人誌およびそれに基づく創作活動の奨励と称揚を目的として設立されたものです。全国同人雑誌賞は2年に1回選考があり、『たまゆら』は記念すべき第1回での受賞となりました。これもひとえに皆様の温かい励ましとご鞭撻のたまものです。大変ありがとうございました。同人一同これからも「書きたいことを書きたいように書く」のモットーのもと研鑽に励んでいきます。

たまゆら最新の121号が完成しました

最新号完成!

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たまゆら121号が完成しました。今回は同人メンバーの中から13人の15作品を掲載。
表紙の装い新たに、これまでの写真だった図柄も水彩画へ。誌名も手書き風へ、手作り感を出してみました。目次をご紹介すると・・・。

 

 

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エッセイあり詩、俳句、小説とバラエティーに富んだ誌面。新しく深田杏さんの家電をめぐる家族模様を描いた短編がユニーク。主人公正田伸二は土曜日の朝、電気屋が洗濯機の据え付けに来るのに一人で対応することになりあたふた。そこへ意外な知らせが届いて・・・。
その他いずれもベテラン執筆陣が人生の綾を描いています。
手にとって読んでいただけませんか。

今、新しい書き手を募集しています。
書きたいことはあるけど、どんな風に書いたらいいかわからない、自信がない・・・。添削を通して学んでいけます。

先着10名の方に121号を無料でお送りします。
ぜひ『たまゆら』を手にとって読んでみてください。
ご希望の方はコメント欄に希望する旨とお名前ご住所をお書き添えください。

 

たまゆら120号の作品が神戸新聞の同人誌評で取り上げられました

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2021年4月30日発行の『たまゆら』120号「二口女」(北口汀子)が6月25日付神戸新聞「同人誌評」で取り上げられました。

「小学5年の夏休み、何の前触れもなく頭痛に襲われた「私」の後頭部に口がもうひとつ現れる。その口はペットのリスを、さらに飼い猫まで飲み込んだ。口から胃に入ったわけではないのに、本来の口の中にはかすかに味が残る。いつか人を食べてしまうのではないかと考えた私は、食べてしまっても支障のなさそうな人物を恋人にする。ついにその日が訪れ、星空の下で恋人を飲み込むと、口いっぱいに星の匂いが広がる。後頭部は異次元につながっているのではという、罪の意識の希薄さと恋人への愛情が混在する、面白い作品だった」

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神戸新聞同人誌評

120号掲載作品
〈エッセイ〉
・「目でなら」 森有紀
・「夢を知る」地場輝彦
・「水仙」 杉本増生
〈連載エッセイ〉
・「独楽・・・信心・仕事・その他(十六)大村一洋
〈俳句〉
・「花のかぎろひ」北口汀子
〈詩〉
・「露」川戸美佐子
・「夜の雨」多岐流二
・「あくがれいずる」森有紀
〈小説〉
・「スーパームーン金川紗和子
・「二口女」北口汀子
・「坂道のシーソーゲーム(四)」中川一之
・「風韻(六)」桑山靖子
・「平成・ミゼッタイズム(五)」榊原隆
・「あれちのぎく」梅本修一郎
・「へろへろ」佐々木国広
〈評論〉
・同人誌寸評、書森散策 佐々木国広