文芸『たまゆら』編集長                       オフィシャルブログ

文芸『たまゆら』編集長のきままなページです。『たまゆら』は30年以上続く老舗の文芸同人誌です。小説、エッセイ、詩、俳句、短歌、紀行文など、好きなジャンルで好きなように書く表現の場です。あなたの書きたい気持ちを活字に。

『坂道のシーソーゲーム』を京都市内の書店に持ち込む

 

『坂道のシーソーゲーム』は業績不振を突き付けられた銀行マンが本分を忘れずに目標に立ち向う姿を描いた作品。一人出版社「たまゆら」出版を立ち上げともかく一冊単行本を出そうとひと夏かかって仕上げた小説がようやく単行本に仕上がった。
 もちろん自費出版だ。主宰する同人誌『文芸たまゆら』117号から122号まで連載していた同名の小説を大幅に加筆修正してまとめたものだ(B6版190ページ、ソフトカバー)。あらすじは下記の通りだ。

<あらすじ>

 舞台は京都。業績不振の責任を突き付けられた京和銀行長岡京支店の副支店長・野本雅夫。新規融資先の開拓に腐心する。そんなときもたらされた金属スクラップ会社・外村工業の2億円の融資案件。外村は京都市南区の世界的ゲーム会社天翔屋の修理業務を行う潜在性のある中小企業。飛びついたが会社の背景を解明するうちに浮かび上がった反社勢力の不動産ブローカー・ディーコムとの結びつき。
 野本は2億円が真に必要な案件なのか見極めようとするが、外村とディーコムが仕組んだ天翔屋への復讐計画が動き出していたことも明らかになり、部内不祥事をきっかけにぎりぎりの局面で融資をストップする。
 銀行の目標ありきの組織体制、隠蔽体質を質し、組織で働く目的、昇進の意味を問いながら足元を見失わない働き方の大切さを描いた。

<面白み>

 在日コリア人が従事する割合の高いスクラップ業界の成り立ちや、経営者の思いを汲み取りながら融資を行う意義に踏み込んでいる点。またバブル期の京都駅前の地上げにも触れ京都経済の暗い過去も描くことができた。
 また不祥事の責任を取らされ左遷された主人公が出向をちらつかされながらも、友人や妻に励まされ、なすべき仕事に踏みとどまろうとする真摯な姿を描いた点も挙げられる。
 金融を軸に世界都市京都、古都京都の闇の部分をえぐりながら働く意味を問うた作品に仕上がった、と思う。


<販路開拓>

 販路はない。未開拓だ。ひとまずプロのご意見を伺おうと京都市内の書店を訪問することにした。扱っていただけるか、お店に並べていただけるかよりも、なにか一言でもアドバイスがいただけないか――こんなもの売れない、置けない、無理無理、と言っていただいても構わない。だめならだめの理由が知りたいのだ。
 大手は担当者にすぐに会えないから当分はセレクトショップを中心に訪問する。今日のところは恵文社さん(左京区一乗寺)、ホホホ座浄土寺店さん(左京区浄土寺)天狼院書店(祇園大和大路通)、レティシア書房さん(中京区二条高倉通)、多士済々さん(中京区寺町)、大喜書店さん(五条鱗形町)。企画書とサンプル本をお渡しし、取り扱えるか検討いただくこととなった。
 いいアドバイスをしてくれたのはレティシア書房の小西店長だ。ミニプレスを中心にセレクトした書籍や雑誌が置かれている。「個人で出版社を立ち上げて販路開拓するのなら東京のトランスビューに当たってみたらいい。一冊からでも取り次いでくれる」
 ありがたいお言葉。
 トランスビューは出版社と書店を結ぶ一冊から受発注できるプラットフォームだ。月額9,800円の基本料金がかかる。ともかく1万円ほど分量の書物が出版できるまでになれば「あり」だ。

1satsu.jp

book-laetitia.mond.jp

 続いて向かったのはレティシア書房さんのご近所「多士済々」さん。店長さん曰く「うちはビジネス書専門で小説の類はおきませんが、これも何かの御縁ですし、1冊置きましょう」と言って下さった。嬉しい!
「取次は日販さんなんですが、当初、個人さんが開業したのは実に18年振りだといわれました。閉店する個人店続出の中での開業だったんですね。本屋は薄利多売でなきゃやっていけません。マージンも20から25%の世界です。小説も置きたいですがここは絞ってビジネス書を専門としました」
「私も本屋をするのが夢です」
「そうですか。でも売れませんよ。近頃では本屋はコーヒーショップをやったり雑貨販売もやるなどしています。本は客寄せで儲けはほかで出す。そんな時代になってますね」

tashiseisei-kyoto.com

「中川さんがお書きになった『坂道のシーソーゲーム』もっとたくさんの人が集まる店においてもらった方がいいですよ。大垣書店さんや丸善さんなど。そうそう高島屋が新館を建てますがあそこに蔦屋さんが入るそうですよ。置いてもらえるようチャレンジしてみなさいよ」
 今日はいいお話をたくさん伺った。ありがたい。プロの話を聞くのが一番だ。しばらく経ってからまた伺おう。『坂道のシーソーゲーム』を読んでいただいた感想を聞けたらなあ。

 坂道のシーソーゲームのお求めは……

bungei-tamayura.booth.pm